教会長の部屋

わたしについて |小向 善幸 |Yoshiyuki Komukai

はじめに

宗教者がそこにいることで、何かが変われば。そう信じて活動しています。
天理教の教会長であり、臨床宗教師として教会の外にも出ています。
革細工もします。

三つはバラバラに見えるかもしれませんが、わたしの中ではつながっています。
どれも「人と向き合うこと」から始まっています。

天理教百石分教会 四代会長
小向善幸こむかいよしゆき

天理教百石分教会長
臨床宗教師(日本臨床宗教師会認定・東北臨床宗教師会副会長)
おいらせ町傾聴ボランティア「あゆみの会」

原点

教会で生まれ育ちました。
23歳のとき、不整脈を患ったことがきっかけで生まれ育った教会とは別の、縁もゆかりもない地で教会長になりました。
準備も覚悟も、まだ十分ではありませんでした。

若くして就任した教会長は、正直なところ、うまくいきませんでした。 信者さんに強引な信仰を押しつけていた時期もありました。 布教活動の意味がわからなくなって、途方に暮れた時期もありました。

そのころのわたしには、「役に立ちたい」という気持ちはあっても、 「どう役に立つか」がまだ見えていなかったのだと思います。

野田村で感じたこと

2011年、東日本大震災の後、天理教災害救援ひのきしん隊として岩手県野田村に入りました。

中学生のころから、Hi-STANDARDというパンクバンドが好きでした。 音楽だけじゃなく、その生き方に影響を受けてきました。 震災が起きたとき、彼らはすぐに動きました。 自分たちにしかできないことをしました。それが多くの人の心を救いました。

ミュージシャンに限らずいろんな人が、自分の意思で、自分にできることをしていました。

わたしはどうだったか。
普段から「世界たすけ」「陽気ぐらし」を掲げて人のため、地域のためにと布教活動をしているのに、 いざ災害が起きたとき、自分の意思で動くことができませんでした。何をすればいいのかわかりませんでした。
災害救援隊に招集されて、初めて動きました。
わたしは、招集されただけでした。

自分の意思で動けなかった。
それだけのことが、ずっと引っかかっていました。

現地では、宗教者として何ができるかもわからなかった。 「世界たすけ」を語る自分が、目の前の人の痛みに何もできない。 その二重の葛藤が、野田村から持ち帰ったものでした。

あの経験が問いになって、ずっと手放せないまま、 臨床宗教師という道につながっていきました。

臨床宗教師へ

2020年、東北大学の臨床宗教師養成講座を受講しました。 2022年、日本臨床宗教師会より臨床宗教師の認定を受けました。

臨床宗教師とは、病院やホスピス、軍隊など、死の近くにいる人のそばに寄り添う宗教者のことです。 特定の宗教への勧誘はしません。ただ、そこにいる。

野田村で感じた問いへの、一つの答えを、ここで見つけた気がしました。

現在は弘前大学医学部附属病院のがん相談支援センターで「ふらっとカフェ」に関わりながら、青森での活動を続けています。

教会という場所の、とらえ直し

正直に言うと、「教会はオワコンだ」と思っていた時期がありました。

臨床宗教師として活動するようになり、地域という概念の捉え方を再構築しました。
地域とは人のこと。人が変われば文化や考え方が変わる。同じ地域の住人だからそ届けられる何かがあるのかもしれない。その地域特有の課題や、その地域でしか醸成し得ないケアのあり方を考えるようになりました。

そのとき気づきました。
教会という場所は、地域に開かれていることが大切なのではないか、と。

地域に根ざし、開かれた場所として、
ただそこにある。
それだけでいいのかもしれない。

信者を増やすことが目的ではありません。 身近な人が、悩みを持ってきてくれる場所。 生きることや死ぬことを、自然に話せる場所。
これまで教会が取り組んできた儀礼や祈り、信仰も大切にしつつ、地域に開かれた場所。
そんな教会を、少しずつ作っています。

革細工について

セルフケアとしての革細工

臨床宗教養成講座を受講中、セルフケアの重要性を学びました。
革細工はセルフケアの一つとして始まりました。
革の手触りや香り、縫製やコバ磨きなど、革や革細工の工程には癒しの効果や没頭できる要素が沢山あると感じています。

今を生き、死を想う

若い頃にコロンビアやメキシコで過ごした経験が、わたしの作品の原点にあります。 メキシコの独特な文化から生まれたアートやモチーフ、 アメリカのタトゥーカルチャーに流れる生と死への眼差し。
臨床宗教師として学んだ死生学や、現場での経験も、 革への向き合い方に影響しています。
そこで出会った「メメント モリ(死を想え)」という言葉を大切にしたいと考え、コロンビアやメキシコの言語でもあるスペイン語で「Vive y Muere(今を生き、死を想う)」と表し、その想いを革に表現しています。

ランドセルリメイクというケアの形

革細工をする中で、たまたま知り合いのランドセルを財布や小物にリメイクしたところ、非常に喜ばれ口コミで広がり、今では青森県おいらせ町のふるさと納税の返礼品に登録されています。

ランドセルを使っていた本人の喜びはもちろんですが、それ以上に親御さんからの喜びの声やリアクションに、ケアの可能性を大きく感じました。
考えてみれば、ランドセルは小学6年間を象徴する存在であり、親御さんにとっても特別な6年間の象徴です。お子さんへの期待や喜び、不安や葛藤。6年間見守り続けたからこそ、決して簡単には処分できない大きな大きな、そして特別な存在なのだと気づきました。
ランドセルリメイクは意味のある活動だと捉え、多くの方に届けたいと願っています。

手を動かして物を作る時間は、どこか祈りに近い時間です。 一点ずつ、静かに向き合っています。

ランドセルリメイクについて情報をまとめています。よければ覗いてみてください。

メディア・活動実績

メディア掲載

2026年4月9日 NHK青森 あっぷるワイド内で米軍三沢基地チャプレンとの交流の様子が放送されました。


2026年3月17日 朝日新聞(青森県版)
日米の宗教者 心に寄り添う交流 〜東北の「臨床宗教師」と米軍基地チャプレン
三沢米軍基地チャプレン訪問の記事が朝日新聞(青森県版)に掲載されました。


2026 2月 三沢基地広報(facebook)
三沢米国軍基地チャプレンとの交流会
東北臨床宗教師会青森支部として三沢基地を訪問。日米のスピリチュアルケア専門職による交流会が取材された。